陸上特殊無線技士とアマチュア無線技士の違いとは?三陸特と四アマがあればドローン操縦できるって本当?

最近ますます活用領域が広がるドローン。趣味の範疇を超えて、外観検知や危険個所の点検、その他物流・配送、警備など幅広く利用される機会が増えています。インプレス総合研究所によって行われたドローン市場の調査によると、2022年度における国内ドローンビジネスの市場規模は3,086億円と推測。対前年度比33.7%の増加となっています。これが2023年度はさらに前年度比24.0%増の3,828億円に拡大すると見込まれており、5年後の2028年度にはなんと9,340億円に達すると予測されています(引用参照:「国内のドローンビジネス市場規模の予測」)。
さてドローン操縦を行う場合、使用する周波数帯によっては無線従事者免許を必要とします。無線従事者免許の中でもドローンを操縦するのに最低限必要だと言われているのが、陸上特殊無線技士またはアマチュア無線技士の資格です。
では、陸上特殊無線技士とアマチュア無線技士の違いとは一体何なのでしょうか?またドローン操縦には陸上特殊無線技士の場合は「第三級陸上特殊無線技士 (三陸特) 」を、アマチュア無線技士の場合「第四級アマチュア無線技士 (四アマ) 」があればドローンを飛ばすことができると言われていますが、はたして本当なのでしょうか?
ここからは、ドローン操縦と資格との関連性について、また陸上特殊無線技士とアマチュア無線技士についても詳しく見ていきます。

陸上特殊無線技士とは?
陸上特殊無線技士とは、陸上における無線設備を設置したり操作したりするのに必要となる資格で、国家資格に該当します。取得した級によって扱えるものは異なりますが、テレビの中継局や携帯電話の基地局、VSATシステム、気象レーダー、警察無線、消防無線、タクシー無線などの設置や操作する現場で活躍できます。
また、似たような名前のものに陸上無線技術士がありますがこれらはまったく別のものです。陸上無線技術士は、陸上特殊無線技士より扱える設備や操作範囲が広いといった特徴があります。たとえば、携帯電話会社やテレビ局といった配信サービス業や、無線機器のメーカーなどで活躍することが可能です。
陸上特殊無線技士資格の種類
陸上特殊無線技士の資格は、「第一級陸上特殊無線技士 (一陸特) 」「第二級陸上特殊無線技士 (二陸特) 」「第三級陸上特殊無線技士 (三陸特) 」「国内電信級陸上特殊無線技士」と4種類あります。これらは資格の種類によって扱える電波の種類が異なっており、「電波法」という法律によって規定されています。
第一級陸上特殊無線技士 (一陸特)
第一級陸上特殊無線技士は、操作の範囲に以下のような規定があります。
- 陸上の無線局の空中線電力500W以下の多重無線設備 (多重通信を行うことができる無線設備でテレビジョンとして使用するものを含む) で30MHz以上の周波数の電波を使用するものの技術操作
- 前号に掲げる操作以外の操作で二陸特の操作の範囲に属する技術的操作
第二級陸上特殊無線技士 (二陸特)
第二級陸上特殊無線技士は、操作の範囲に以下のような規定があります。
- 次に掲げる無線設備の外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさないものの技術操作
イ 陸上の無線局の空中線電力10W以下の無線設備 (多重無線設備を除く) で1,606.5kHzから4,000kHzの周波数の電波を使用するもの
ロ 陸上の無線局のレーダーでイに掲げるもの以外のもの
ハ 陸上の無線局で人工衛星局の中継により無線通信を行うものの空中線電力50W以下の多重無線設備 - 三陸特の操作の範囲に属する操作
第三級陸上特殊無線技士 (三陸特)
第三級陸上特殊無線技士は、操作の範囲に以下のような規定があります。
陸上の無線局の無線設備 (レーダー及び人工衛星局の中継により無線通信を行う無線局の多重無線設備を除く) で次に掲げるものの外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさないものの技術操作
- 空中線電力50W以下の無線設備で25,010kHzから960MHzまでの周波数の電波を使用するもの
- 空中線電力100W以下の無線設備で1,215MHz以上の周波数の電波を使用するもの
なお、第三級陸上特殊無線技士の資格所有で
- 警察無線・消防無線・鉄道無線などの基地局
- MCA無線の制御局
- 携帯電話やPHSの通信機能抑止装置の設置局
- 業務用ドローン利用による空撮
などの業務を行うことができます。
国内電信級陸上特殊無線技士 (国内電信)
国内電信級陸上特殊無線技士は、操作の範囲に以下のような規定があります。
陸上に開設する無線局 (海岸局、海岸地球局、航空局及び航空地球局を除く) の無線電信の国内通信のための通信操作
アマチュア無線技士資格の種類
アマチュア無線技士の資格には、「第一級アマチュア無線技士 (一アマ) 」「第二級アマチュア無線技士 (二アマ) 」「第三級アマチュア無線技士 (三アマ) 」「第四級アマチュア無線技士 (四アマ) 」の4種類があります。第一級アマチュア無線技士が最も難易度が高いうえ扱える設備の範囲が広く、第四級アマチュア無線技士だと難易度が低い分扱える設備の範囲が狭くなります。
第一級アマチュア無線技士 (一アマ)
第一級アマチュア無線技士は、アマチュア局のすべての無線設備を操作できます。
第二級アマチュア無線技士 (二アマ)
第二級アマチュア無線技士は、アマチュア局の空中線電力200W以下の無線設備の操作が可能です。
第三級アマチュア無線技士 (三アマ)
第三級アマチュア無線技士は、アマチュア無線局の空中線電力50W以下の無線設備かつ18MHz以上または8MHz以下の周波数の電波を使用する無線設備の操作ができます。
第四級アマチュア無線技士 (四アマ)
第四級アマチュア無線技士は、アマチュア無線局の無線設備で次に掲げるものの操作 (モールス符号による通信を除く)が可能です。
- 空中線電力10W以下の無線設備で21MHzから30MHzまでまたは8MHz以下の周波数の電波を使用するもの
- 空中線電力20W以下の無線設備で30MHzを超える周波数の電波を使用するもの
なお、趣味のレベルに関するドローン操縦の場合、第四級アマチュア無線技士を取得していれば可能となっています。
陸上特殊無線技士とアマチュア無線技士の違い
陸上特殊無線技士とアマチュア無線技士ともに無線設備を操作するのに必要となる資格ですが、両者の大きな違いは、陸上特殊無線技士が商業利用および営利目的での利用が可能である一方、アマチュア無線技士は趣味レベルの範囲に限定される点にあります。
また、陸上特殊無線技士とアマチュア無線技士には電波法上の違いもあります。陸上特殊無線技士はアマチュア無線技士の範囲の操作を行うことができないとされていますので、お互いが干渉しあうことはありません。
陸上特殊無線技士とアマチュア無線技士の試験内容はあまり大きな違いは見られず、電気関連の基礎理論や空中線関連の理論などが出題されています。ただし、陸上特殊無線技士試験のほうがアマチュア無線技士試験よりも深掘りされた問題が出題される点に注意です。
ちなみに各試験の合格率は以下の通りです。
過去3年 (2019~2021年) の陸上特殊無線技士合格率
2019年 | 2020年 | 2021年 | |
---|---|---|---|
第一級陸上特殊無線技士 | 34.6% | 42.6% | 37.9% |
第二級陸上特殊無線技士 | 73.9% | 84.5% | 83,3% |
第三級陸上特殊無線技士 | 89% | 85.9% | 88.1% |
国内電信級陸上特殊無線技士 | 17.1% | 18.2% | 13.3% |
過去3年 (2019~2021年) のアマチュア無線技士合格率
2019年 | 2020年 | 2021年 | |
---|---|---|---|
第一級アマチュア無線技士 | 35.3% | 28% | 29.3% |
第二級アマチュア無線技士 | 47% | 53.7% | 51,7% |
第三級アマチュア無線技士 | 80.2% | 81.3% | 81.1% |
第四級アマチュア無線技士 | 78.7% | 82% | 80.4% |
まとめ: ドローン関連であれば三陸特または四アマで十分
ドローン操縦を行う目的で陸上特殊無線技士またはアマチュア無線技士の資格を取得するのであれば、第三級陸上特殊無線技士 (三陸特) または第四級アマチュア無線技士 (四アマ) があれば十分です。
ただし前述のように、アマチュア無線技士の資格では無線設備の操作が趣味レベルに限定されてしまうため、業務で利用する場合には三陸特の資格が最低でも必要となります。ドローン操縦を業務でも趣味でも行いたいのであれば、両方の資格を持っていれば安全です。難易度はそれほど高くないので、ぜひ三陸特および四アマの資格取得にチャレンジしてみましょう。
