建築、農業、林業、土木…ドローンが活躍する現場

日本国内のドローン市場規模は、インプレス総合研究所の調査によると2022年には3,086億円と推測されていましたが、2023年に3,828億円、2028年には9,340億円にまで達すると見込まれています。このように今後大きな市場拡大が予想されているドローンビジネス市場ですが、ドローンが活躍できる業界にはどのようなものがあるのでしょう?
ここでは、ドローンが活躍する現場を業界別に見ていきたいと思います。

ドローンの活躍する現場・分野について
ドローン利用は趣味の領域を超えてビジネス分野にて活躍する期待が持たれていることは、上記のデータからもお分かりかと思います。空中を自由自在に動くことができるドローンは、まだまだ空撮などの映像制作用にすぎないと思われがちですが、日本国内でも2019年にLTEドローンを利用し郵便局の書類輸送を実施したり、2020年には個人宅への配送実証実験もスタートしており、ドローン活用のビジネス化はますます加速しそうです。
そんなドローンが活躍する現場・分野としては
- 医療分野
- セキュリティ関連領域
- 物流産業分野
- 災害時の調査
- 人間が入ることのできないエリアの生態調査
- 軍事産業分野
など多岐にわたります。これ以外にもエンタメ分野や倉庫管理、通信などの領域での活用が見込まれています。
その中でも特定の業界においてどのような使われ方がされるのか気になる方も多いと思います。
ここからは、分野別のドローン活用方法を細かく見ていきます。
建設業界
建設業界でのドローン活用は、比較的早い段階から行われていました。建設業界の作業には、高層階での危険な作業が付きまといます。そのため、人間に代わり危険な場所の点検やメンテナンスをドローンによって行うなどドローンの活躍する領域は多く存在します。またドローン活用によって、点検作業員の人件費を抑制することができるため、今後少子高齢化で人材確保が難しくなっていく建設業界でもドローン活用は盛んになってくるでしょう。
施工管理
施工管理もドローンによって行うことができる作業の一つ。たとえば、2023年には株式会社CLUEが提供するiPadアプリ「ドローン施工管理くん」が、国土交通省の新技術情報システム「NETIS (ネティス: 公共工事等における新技術情報提供システム) 」に登録認定されました。これにより省人化や作業効率化を実現させたり、これまで属人化していた施工管理の品質を向上させること等が期待されています。
測量
現在ドローン測量が注目されています。従来の測量では地上測量や航空測量がスタンダードとされていましたが、地上測量の場合、作業員が徒歩で計測する必要があり多くの時間や人員がかかる非効率なものでした。その点、ドローン測量では、時間や人的コストを大幅に短縮することが可能で、かつ広い範囲の測量を行うことができます。
住宅点検 (外観検知)
戸建て住宅の屋根診断や、マンションの外観検知などでドローン点検を行うところも増えています。もちろん目視に勝る検査はないかもしれませんが、ある程度のひび割れなどは問題なくチェックできます。また最近ではAIを使った外観検知も行われており、学習データに基づく不良予測なども可能です。
農業
農業用のドローンも普及が進んでいる分野です。農業分野で活躍するドローンといってもその形はさまざまで、マルチコプター型のドローンでは肥料散布などを、センシングなど生育状況などを把握する際には特殊なカメラを搭載したドローンなどが使用されます。
農薬・肥料散布
農業ドローンの代表的なものは、農薬や肥料の散布です。ドローンに農薬・肥料を搭載したタンクを積んで圃場への空中散布を行います。これまでは小型ヘリなどによる農薬散布等が行われていましたが、ドローンによる散布の場合は低コストでの実施が可能となります。
播種
播種 (はしゅ) とは、種まきのこと。現在でもトラクターを使った播種は行われていますが、農業分野の働き手不足は今後さらに深刻化するとも言われており、ドローンによる播種は今後さらに増加すると思われます。
農産物運搬
農産物の運搬にもドローンを使用するケースを想定する動きもあります。たとえば、北海道などでドローンが各農家の収穫物を集荷、道の駅に出荷するというユースケースを想定した実証実験が行われたケースもあり、2023年には実用化が見込まれています。
林業
これまで紹介した建設や農業だけでなく、林業従事者も減少の一途を辿っています。そのため、日本の林業を守るためにはドローン活用は避けて通れません。林業へのドローン活用では森林の調査および計測、または駅の運搬などの利用が行われます。特に日本の林業の場合、森林の多くは急傾斜地にあることも多く、人間が足を踏み込むことが困難なため、ドローンが活躍することは明らかです。
森林調査・計測
森林調査・計測へのドローン活用は、樹種の判別・特定、立木本数などを計測するために活用したり、林相図の作成などにも効果的です。
苗木運搬
造林のために準備した苗木または鹿柵等といった獣害防除資材を、土場から造林現場まで運搬するのにドローンが使われます。ただし、導入コストの問題や運搬距離の制限、ドローン操縦者に高度な操縦技術が求められるなど課題も多いと言われています。
土木
土木業も建設業同様、ドローンが活躍できる場所が多々あります。
測量
ドローン測量は、建設業だけでなく土木業でも活用されており、最近では高精度な3D地上レーザー測量も普及しています。土砂崩れ現場や災害現場などの測量も、従来ほどのリスクがなく行えます。
資材運搬
土木では重い資材の運搬が今後の大きな課題です。ドローンはその性質上最大荷重は少ないため、どれだけのものが運搬できるかが、利用可否を決めるハードルにもなりがちですが、今後現在以上に労働者人口が減少することを見込み、さらなる性能を持ったドローンの開発が待たれます。
まとめ:ドローンビジネスの今後
冒頭でお伝えしたように、日本国内のドローン市場規模は、2028年頃には1兆円に迫る勢いと目されているほどの大きな市場になることが予想されています。
ドローン自体の操縦は免許が無くても行えるものの、2022年12月にはドローンの国家資格 (操縦ライセンス制度) が開始されたことにより、これまで飛行できなかった場所への飛行が可能となったり、申請・許可の手間が省略されることで、これまでよりさまざまな業務の現場でドローンが活躍する機会が増えることと思われます。今後、さらなる法整備や技術革新が行われ、日常生活の中にもドローンが溶け込んでいくことも想定されますので、ますますドローンから目が離せません!
